yigarashiのブログ

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EM of EMsになった - 現在の働き方とそこに至るキャリア戦略

EMキャリアの近況報告シリーズです。2024/4にEM of EMsになったので、現在の働き方やそこに至るキャリア戦略について書きます。これまでの様子は以下です。

現在の働き方

私が所属する株式会社はてなでは、いくつかの事業からなる事業本部を組織しています。自分はこの事業本部付きのEMにあたります。事業責任者と横並びになる形で、エンジニアリングで本部全体に貢献する責任を負っています。EM of EMsとは言ったものの、実はまだ各事業にEMはいなくて難しいところなのですが、大半のマネジメント能力が完結している各事業を外から支援する形なので、抽象度としてはEM of EMsと言って差し支えないでしょう。前任者もEM of EMsを名乗っていたので問題ないはずです。

本部を分解すると各事業になるので、基本的にはそこがうまく回るように動きます。EMの4象限のうちプロダクト・テクノロジー・デリバリーは各チームのリーダー陣が引っ張ってくれるので、その人たちの成果が大きくなるよう働きかけつつ、残るピープルマネジメントの大部分を引き受けています。自分のスパンオブコントロールはしっかり超えているので、EMの育成を急ぎ進めているところです。より間接的なアプローチになるので、情報収集や距離感にはしっかり苦戦しています。

また、そうしたプロダクト開発のマネジメントだけでなく、P/Lや事業計画といった経営との接続にもエンジニアリングの側面はあり、そこの情報提供や説明責任も自分の仕事です。インフラ費用や見積もりといった情報が、適切なタイミングに適切な精度で各チームから出てくるよう働きかけたり、事業戦略、人件費、組織の能力、育成等を踏まえて増減員を提案したりします。そこで関わるのは、会社のお金を預かって数字に徹底的にコミットする事業責任者たち、そして経営陣です。その環境で見劣りしない仕事をできているかは常に気にしています。

加えて、本部単位の組織戦略やビジョンを打ち出す活動もしています。直近では、事業から逆算してインパクトを出せるエンジニアを増やすべく「事業を成長させる組織」というビジョンを発信しています。そこからブレークダウンする形で、事業計画をなるべくオープンにして巻き込んだり、エンジニアの育成に事業責任者の目線を入れたり、いろいろ打ち手を試みています。事業と組織のシナジーを生み出しながらストーリーを構築していく仕事は非常に面白いです。

全社の技術グループにおいてもチーフエンジニアという肩書にはなっており、書類選考や面接など採用に関わる仕事を定常的に行っています。

そこに至るキャリア戦略

もともとは1チームのEMをやっていて、それはそれで面白かったのですが、もう少し抽象度の高いレイヤーで考える方が面白そうだなと思うようになりました。プロダクト開発にしても、具体的な仕様や作り方よりも、戦略としての位置付けのほうが面白いといった具合です。社会人キャリアの中でも言語化や抽象化を評価されることが多く、扱う情報の抽象度を上げることは自分の能力にマッチしていそうです。やってみたい、ワクワクする、今よりバリューを出せる、といった思いが自然と湧きました。そんなわけで本部EMを目指そうと考えました。

まずは自分の持っている仕事や役割を整理して、もとのチームのマネジメントをしながら隣のチームのヘルプに行くことにしました。ちょうど手が足りず困っていて、どうにかならないかと相談されていたのでした。ヘルプ先のチームでは最初はバリバリ実装をする想定だったのですが、結局チームの目標整理やファシリテーションのバリューが上がってきて、EMとして振る舞うことになりました。そのチームには自分の倍近いキャリアのベテランが複数人いて、最初は戦々恐々としていました。しかし仕事をしていくにつれて、働きぶりを称賛してもらったり、「マネジメントをちゃんとやるってこういうことなんだ」と声をかけてもらったり、EMとしてちゃんと成果が出ている実感を得られるようになりました。彼らと一緒にいてもなお自分のマネジメントスキルが重宝されたという事実は今でも自信の源になっています。結果として複数チームをマネジメントすることになり、マネジメントのスコープがチームから事業へと広がりました。

最初のラダーを登ってひと息ついたところで、本部EMになるにはどうしたら良いだろうと考えました。数人チームでお試しでリーダーになるのとはワケが違います。どうしようかと困っていたところ、偶然TwitterでLayerXの@makoga(小賀昌法)さんに雑談のお誘いをいただきました。小賀さんと情報交換する中で、「事業や組織の具体的な未来像を考えて、そこに向けて採用や育成に取り組んでいる」という旨の話を聞きました。そこで私はピンときました。本部EMに求められるのは、まさに事業や組織の未来の姿を描きそこに向けた手を打てることです。であれば、自分が本部EMになった場合の組織の未来像を提案し、具体的な道筋を示すのが最初の一歩だと考えました。各チームの人員計画、自分を抜擢するメリット、全社状況から見た現本部EMの次のチャレンジなど、自分を本部EMに異動するのに必要なロジックを積み上げて、当時本部EMだったid:taraoさんに共有しました。

結果は合格も合格で、1年ほどかけて組織を変化させる想定だったはずが、提案から1ヶ月もしないうちにid:taraoさんから退職の意向を聞くことになりました。僕が追い出したとかそういうネガティブな話でないことは転職エントリを見ていただければ分かるのですが、まあ色々と噛み合って、4月の半ばから本部EMをやることになりました。準備する間もなく変化を迎えたのはかなり大変でしたが、5年間お世話になった先輩からの最後の課題(ギフト)として精一杯取り組みました。これは皮肉でもなんでもなく、急ピッチで本部EMの仕事を身につけるこの2ヶ月は、自分の仕事人生史上で最も充実した楽しい期間になりました。無事なんとかなって元気にやっています。

これからについて

これまで目まぐるしくキャリアを駆け上ってきましたが、流石にスピードが鈍化するタイミングだろうなと思います。自分がコミットする時間軸が半年〜3年という非常に長いものになりました。もちろん目の前の緊急度の高い課題もあるのですが、最終的に事業と組織の成長として返ってくるにはどうしても時間がかかります。望んで今の職務を得たからには、組織にもたらした成果を確認するまでは続けるのが筋だろうと思います。

また、最近発売した「エレガントパズル」の4章にあるように、職位や影響する人数は仕事の違いに過ぎないことを胸に刻む必要があるでしょう。もちろん素朴にVPoE、執行役員という形でキャリアラダーの上を見据えることもできるでしょうし、それは十分すぎるくらいにチャレンジングな目標になるはずです。一方で、複雑でインパクトの大きい課題にアプローチできているか、コンフォートゾーンを出られているかという視点も大事そうです。今の仕事を楽しみながら、少しずつ次のことを考えようと思います。

そして今回の異動で、ついに自分の仕事がマネジメント100%になりました。移行期間から数えてもう3ヶ月ほどコードを書いていません。そして困ったことに(?)マネジメントが楽し過ぎて、プレイヤーに戻りたくないという思いも抱いています。このまま突き進んでEMとして行き詰まることはないのか、ありがちな不安は付きまとうわけです。この件を同僚のEMであるid:daiksyさんに相談したところ、「でもマネージャーを極めるだけで全然時間足りないですよね」と核心を突かれてしまいました。非常に共感するところで、最近は徐々に腹が決まってきています。マネージャーという働き方を徹底的に追究する方が楽しそうな気がするので、プレイヤーとしての帰還不能点といった話は忘れて、行けるところまで行ってみるか!という感じです。

また大きな変化があれば記事を書きます。