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「真摯な質問」のコツを知って誘導質問しない信頼できるマネージャーになる

「真摯な質問」は対話の基礎を成す重要な要素です。「組織を変える5つの対話(p.41)」では、真摯な質問の特徴を次のように挙げています。

本当に答えを知りたい。

答えを聞いて驚くことがあってもそれは当然である。

答えに応じて自分の考えや行動を変えることをいとわない。

つまり純粋に新しい情報を求める意図のみで行われる質問のことです。裏表のない創造的な対話が相手の自律性を引き出します。マネージャーとして同僚の力を引き出すための強力な武器であると考えています。本書では続けて、真摯ではない質問についても述べています。

それとは対照的に、真摯ではない質問は何か新しいことを学ぶよりも自分の主張をするために使われます。本当は意見の表明であるのを隠していたり、自分の思い通りの結論に相手を導こうとしていたりするのです。

しかし、こうした質問が悪意から来るとは限りません。自分が望んだ結果を得ようと無意識に発せられることもあるでしょう。また、コーチングの文脈においては自分で気づくことの価値が繰り返し語られています。時には「答えを知っているけどあえて質問する」という振る舞いをすることになるかもしれません。そこで誘導質問を避けるのはかなりのテクニックが必要です。たまにある1on1や傾聴スキルが嫌いであるという話題は、こういうところに原因の一端があるのではないかと思います。相手が何か思惑を持って、答えを隠して自分を試そうとしているのは気持ち悪いものです。私自身ここがうまくできず、同僚とぎこちない会話をしてしまうことがありました。

しかし今ではこうした質問に自覚的になり回避できることが多くなりました。実りのある会話ができていると感じるシーンが増えていて、マネージャーという仕事の楽しさが増しています。以下ではいくつかのコツを紹介します。

コツ(1): ティーチング

まず相手の状況や課題が一般的な概念や典型的なプラクティスなど、普遍性の高い情報で説明できると思う時は、ティーチングに切り替えてそれを教えます。まずはそれを知っているか相手に聞くところから始めると丁寧でしょう。その上で、「いまの説明を聞いてどう思いましたか」「いまの状況に適用して考えてみるとどうなりますか」といった質問をします。相手に伝わっているかどうか、意味のある回答になったかどうかを確かめる質問になっており、自然と真摯な質問ができています。下手に遠回りするよりも建設的で安全な対話をできているはずです。

コツ(2): 期待の伝達

自分がリーダーやマネージャーとして、明確にやって欲しいこと、期待する振る舞いがある時は、それは遠回りせずにはっきりと伝えます。誘導するような質問をして勝手に相手に失望するのが一番良くありません。その上で、期待に応えられそうか、障害物がないかといったことを聞きます。これも真摯な質問になっています。

コツ(3) 相手の脳内について聞く

相手の脳内、つまり感じたことや考えていたことは、どこかに書き出されていない限りは未知の情報です。たとえば直近の仕事を題材に話すようなケースでは、何をしたか、どういう結果になったかといったことは知っていたとしても、「なぜそうしようと思ったか」「結果に満足しているか」といった相手の脳内の情報は知らないことが多いでしょう。そういった真摯な質問をできる部分を見つけて対話を進めることで、よいふりかえりの機会を作ることができます。

コツ(4): 自己マスタリー

「学習する組織」において、自己マスタリーというあり様が説明されています。組織が望んだ結果を得る能力を磨き続けるために必要な要素とされています。重厚な内容でひとことで説明するのは難しいのですが、ひとつの特徴として、自分が見ているのは現実の一側面であると認めて客観的な見方を探究し続ける姿勢があります。真摯な質問はこの姿勢の先にあるものだと思います。自分の結論はどこまで行っても完全ではないと信じられるようになった時、「今のを聞いてどう思いましたか」という心からの質問をできるようになると思っています。

コツ(5): 本当に知らない状況を作る

真摯な質問をする一番シンプルなコツは答えを知らないことです。マイクロマネジメントを避け、同僚の細かい状況を知りすぎないようにしておくことで、逆に対話の質が向上するケースがあるように思います。何をしたのか、なぜそうしたのか、それについてどう思っているのか、知らないからこそ真摯に一気通貫のストーリーを聞いていけるわけです。ストーリー全体を一緒に辿ることで、内省の機会としてもよく機能します。当事者ではない方がうまくコーチングができるというのは、こういうところから来るのかもしれません。

以上、5つのコツを紹介しました。真摯な質問を使って、信頼できるマネージャーを目指していきましょう。