書籍「1兆ドルコーチ」で紹介されているテクニックの中に、「議論すべきトップ5を挙げよ」というのがある。ビル・キャンベルは毎回1on1のために議論すべきトップ5を準備して臨んだのだそうだ。それをすぐに出すことはしないで相手にもトップ5を考えるように促す。それ自体がコーチングであるし、お互いのトップ5を突き合わせて優先度を決めることもトレーニングになるとしている。
自分は以前の記事 事業を深く理解しOODAループを回しまくる最近の自分のEM像に至るまで - yigarashiのブログ でも書いたように、毎週マネジメント対象のチームや個人の状況認識をアップデートしてまとめるようにしている。その中で気づいたことを1on1に持ち込んで話すことも多く、1週間の1on1の準備としての側面も強い。ただ最近この状況認識のアップデートがマンネリ化していて、必要なことを考え抜けているか、1on1を価値ある場にできているかと考えていた。そこに上述のテクニックを思い出したので試してみることにした。トップ5は多いのでまずはトップ3から始める(ビル・キャンベルが特に関わっていたのはGoogleやAppleといったビッグテックの経営層であるから、我々と比べて懸案も多そうである)。
まずは自分で一度考えてみたところだが、今のところ感触がすごく良い。「議論すべき」というラベリングが脳を刺激してくれる感覚がある。単に課題ベスト3は何かと考えるよりも、自分がその人と何を議論すべきかと考えると、自然と具体的な状況やナラティブに沿って思考することができる。その場でことを前進させるニュアンスも強まるので、具体的な行動方針について考えを深めるきっかけにもなった。1on1の準備をしっかりできている感触があるし、チームの課題についてもいくつか発見があった。しっかり準備しているからこそ、それを胸に秘めてコーチング機会をつくる余裕も生まれそうだ。
自分のアクティビティとしては感触が良いので、合いそうなメンバーと「トップ3」のアクティビティをやってみようと思う。この記事はその説明のためのドキュメントでもある。
書籍を読んだ限り、ビル・キャンベルが名だたる経営者に対してこのアクティビティを機能させられたのは、自身もまた優れた経営者であったからに他ならないと考えている。自分もEM、スクラムマスター、エンジニアなど様々な職種における経験・知識・洞察を深めなければ、有益な「トップ3」を準備することはできない。実務家としての緊張感を持ち続けたい。そういった意味でも、1on1に自分なりの仮説を持って臨むというのは良い試みになるだろう。仮説を持つことで学びを大きくすることができる。