yigarashiのブログ

学んだことや考えていることを書きます

チームが重要な目標にリソースを使えているか可視化する

リソースを集中させるのは難しい

プロダクト作りにおいては、一番効果が高いところにリソースを集中しリードタイムを縮めるのが良いとされています。スクラムをやっているなら、ただひとつのプロダクトゴールが掲げられていて、そのためのプロダクトバックログアイテムに取り組む割合が高いほどゴールに早く辿り着くことが期待できます。しかしこれを実践するのは非常に難しいです。ステークホルダからの依頼、並行プロジェクト、障害対応などなど、チームが重要な目標に向かうのを阻む障害物が無数にあります。プロダクトバックログ Deep Dive | Ryuzee.comにおいても、「スプリントゴール直結のプロダクトバックログアイテムとそれ以外(上述)のプロダクトバックログアイテムの比率を7:3程度にすることも多い」と述べられていて、集中しきれないのは避けられないことではあると思います。

少しでも集中するために

こうした難しい状況のなかで、まずは「自分たちがどれだけリソースを集中できていないか」を知ることは非常に重要です。状況を透明化しなければ検査も適応もできません。ということで、自分のチームでは以下のようなバーンアップチャートで実績を可視化してみることにしました。

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青と赤の線が、プロダクトゴールに紐づく施策に関する通常のバーンアップチャートです。青がポイントの全量で、赤が実際に消化したポイントです。今回重要なのは黄色の線で、これはチームのベロシティを積み上げたものです。赤と黄色の線の差分が、プロダクトゴールに紐づかないバックログアイテムに吸い込まれてしまった工数を表しています。このグラフでは残念ながら50%を超えてしまっていますね。もし100%のリソースを投入できていたなら、この施策はチャートの範囲で既にリリースできていたかもしれません。

このチャートはPOの思考を研ぎ澄まします。プロダクトバックログアイテムの優先度は本当に正しいのか、正しいならどこに問題があるのか、例えばリソースが足りてないのか、組織設計に問題があるのかといった推論が進んでいきます。ちなみに今回の件では、優先度設定には問題なく、実際その都度どうしても先送りにできなかったり、明らかに価値が高いとわかるアイテムだけが上位に上がってきていることを確認しました。つまりボトルネックは別のところにあるということです。リソースの使い方を可視化したことで、課題を正しく捉えて建設的に議論が進んだのが面白いポイントです。

この活動の位置付け

この活動はスクラムにおける「透明性」を獲得するものだと考えられます。そして透明性を獲得したことで検査と適応が進み始めました。課題に感じることがあるなら、まずは定量的に可視化すると話が進むかもしれません。ちなみにこうしたリソースの使い方やチームのキャパシティを知るには、チームが取り組むすべてのアイテムに見積もりが入っていることが前提になっています。先日YAPC 2022で発表したスクラムで作る頼もしく生き生きとしたチームでも、見積もりによってチームが成長した話をしていて、見積もりにだいぶ助けられているなと思います。見積もりをしていない世界で全アイテムの見積もりを始めるのは結構勇気がいるのですが、一度始めると見積もりしないのはありえないと感じます。あまりにも良いことが多すぎるので。みんなも見積もりしましょう。