yigarashiのブログ

学んだことや考えていることを書きます

『SCRUM MASTER THE BOOK』を読んでスクラムマスターを何もわかっていないことがわかった

読み始めるまでの話

社会人として働き始めて2年、Webアプリケーションエンジニアとしてコードを書きながら、プロジェクト管理やスクラム開発の運営に積極的に取り組んできました。特にここ1年は、偉大な先人が築いたスクラム開発の土台を引き継いで、実質的にスクラムマスターのような活動をしてきました。

この「実質的に」「のような」というのが最近の課題で、プロセスの改善やチーム運営の民主化、自己組織化の促進に取り組んでいるものの、自分も周囲も何を以ってスクラムマスターとするかが曖昧で、はっきりとスクラムマスターを名乗ることができていません。とはいえ、ハイパフォーマンスな開発チームを組織する上で重要な役割を果たせているという点に関しては、ある程度の合意が取れており、そうした役割を再生産していくためにも、明確に名前をつける機運が高まっていました。そこで、改めてスクラムマスターの定義を確認して議論を整理しようと考え、社内でおすすめされていた『SCRUM MASTER THE BOOK』を手に取りました。表紙には「『スクラムマスターは何をすれば良いのか』に答えてくれる本」とあり、頼もしい限りです。

学んだこと

スクラムマスターをひとことで表すと「アジャイル開発の導入とチームの自己組織化を支援するサーバントリーダー」ということになりそうです。特に本文では自己組織化の部分が重点的に書かれており、チームに気づかせ、チームに解決させるという考え方が様々な切り口で登場します。つまりスクラムマスターは、障害物を取り除いて回る秘書ではなく、チームを信じて行動を促すコーチであるということです。変化を起こし続けることが重要で、遊び心やポジティブさも重要な資質として書かれています。また、チームの成長を志し長期的な成果を求めることから、デリバリーの責任を負うべきではないとされています。

このあたりが印象に残った主張で、他にもスクラムマスターとしてうまくやっていくための様々なスキルが解説されており、どれもためになるものばかりでした。また、スクラムマスターのレベルについても解説されており、開発チームだけでなく、プロダクト開発や会社といった大きなスコープにスクラムマスターとして働きかけていく道筋も提示されています。

自分の振る舞いと考え方を改める

この本を読んでまず真っ先に思ったのは「自分はスクラムマスターではなかった」ということです。チームメンバーとスクラムマスターを兼務する場合の罠に見事にハマっており、目の前の問題を自分で解決することばかり考えていました。自分がプロセスを改善していれば物事が勝手にアジャイルになると信じていましたが、SCRUM MASTER THE BOOKの教えはそれとは全く逆のことです。アジャイルなチームとアジャイルなデリバリーの仕組み - yigarashiのスクラム開発ブログではプロセスとチームというようにアジャイル開発の構成要素を分解したように書いていますが、実際はプロセスのみに注目していたところに、チームや文化に着目する視点が与えられて考えが広がったのでした。チームを信じ、チームが成長することを喜べるようになる必要があります。

そうした流れから、単にアジャイル開発プロセスを整備するだけの人から、チームをアジャイルにするスクラムマスターになろうとしています。そのために振る舞いや考え方を意識的に変化させています。さしあたって以下のようなことに取り組んでいます。

  • ポジティブな雰囲気を作る
    • ふりかえりではポジティブな話題に着目しやすいようにアクティビティを調整する
    • ネガティブな話題ではポジティブな言い変えをしたり良かった面をコメントする
  • チームに任せる
    • なんとなく解決策を持っている時もチームがアクションを出せないか待つ
    • 議論が多少白熱してもチームで収束させられないか様子を見る
    • ※そもそも解決したがりで解決策を思いつきがちなために今のキャリアを歩んでいるので、この部分は本当に難しいです。しばしば自分で解決策を喋りまくってしまうことがあります。また一方で、自分でも解決策がわからないことは正直に言った上で議論を始めるなど、丸投げとコーチングを履き違えないように気をつけています
  • オーナーシップを委譲する

こうした取り組みを行う一方で、自分が専任のスクラムマスターになりたいかということも考えさせられます。今のところ答えはノーで、どちらかというとエンジニアリングに関わり続け、エンジニアリングマネージャーとして技術面のリードやピープルマネジメントに手を広げられると面白そうな気がしています。偉大なスクラムマスターとしてのスキルをサブセットとして取り込んで、より面白いキャリアを歩みたいものです。